
市場や漁場で水産生物を探しているだけでは、なんにもわかりはしない。
さて、長野県飯綱町、第一スーパーで見つけたのが「山田のさばカツ」だ。
大分県佐伯市『山田水産』が作っているもので、九州から北信に送られて来たんだな、というのも感慨深い。
大きな会社らしいが、このようなオヤジの琴線に触れる商品を作っているところがすごい。
サバのカツ(フライ)に甘辛いたれを染み込ませたもので、実にイケている味である。
ちょっと温めるとやたらにおいしくて、もうひとつの「さんまの蒲焼き」も買えばよかったと後悔した。
ちなみに最近、やたら無機質なラベルの、無機質で上品な加工品が多くなってきている。
ちっとも魅力的ではないけど、売れるんだろう。
「山田のさばカツ」のような人間味のある商品が増えるといいな。
たぶん今どきの若い衆も好きだと思う。
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3尾いて一番左右幅のあるものの刺身は、非常においしかった。
ウスメバルは漁期ははっきりしているが、卵胎生の魚の特徴として旬がわかりにくい。
今回、この個体だけ身に張りがあり、刺身に引くと味と甘味があった。
舌の上で味のだれがない。
このおいしさは予想外。
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「子代」という漢字を当てることがある。下野に住んでいた娘と有間皇子(ありまのみこ。孝徳天皇の悲劇の皇子。640年-658年)が登場するわざとらしい話があるなど、話題豊富な魚である。
大都市圏のある内湾域に多い魚なので知名度は高い。古くからの共通固有名詞があるので、なんらかの形で古代に流通していたはずである。
この魚の問題点は食べる地域が狭すぎるということだ。
関東では全長20cmくらいまではすし種に使うが、それ以上になると流通量がぐっと減り、最底辺の価格帯になる。
当然、産地で水揚げされても廃棄(フィッシュミール)などになることが多い。
■写真は全長25cm以上の「このしろサイズ」のコノシロ。
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いわき市の『海宝水産』からで、体高があり、背が左右に膨らんでいる。
触らなくても上物だ、と思えたので、いきなり確保する。
体長34cm・0.6㎏なのでスズキとしては小振りである。
帰宅後、下ろしながら浮き浮きしているボクがいる。
「野バラ咲いてる♪」を唄っているボクがいる。
下ろすのが楽しい。
活け締めしたばかりのような身色だし、味見すると心地よい食感だし、とりあえず、昼ご飯のおかずにして楽しむ。
うま味豊か、小振りなのに、脂の乗りがほどよい。
醤油なしで食べても、おいしいのにびっくり。
おいしい刺身はご飯がいい。
酒の味が邪魔ですらある。
それにしても20年以上前の請戸のことが思い出される。
福島の水産は新しい時代を迎えているのかも。
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たまには本音を言わせてもらうと、水産生物と人との関わりを調べるのってとっても大変なのだ。
自己否定の繰り返しなので、精神的にも辛いし、めまいの症状が出てしまう。
さて、メバルは2008年まで1種とされていて、それが3種に分かれる。
それ以前に撮影したネガもポジもデジタル画像も3種に分けていないわけで無意味なものとなる。
比較的無意味ではない画像を整理していたら、ここ1週間でたぶん5時間くらい時間を消費している。
ボクは、日々大量の水産生物を撮影して料理しているし、テレビ電話とか、いろんな仕事上の相談とかがあるので、このメバル3種に費やした5時間だってバカにならない。
ただ3種に分けた魚類学者は何年もかけて、遺伝子まで調べているわけで、その研究に費やした時間は信じられないくらい膨大だろう。
3種に分けるということは19世紀、キュビエの時代にまで遡る必要があるのだ。
例えばタイプがフランスにあるとしたら、とか考えると息苦しくなる。
その話をテレビ電話で Dに話したら、「(2008年なのに)昔にもさかなクンがいたんですね」と言われてびっくりした。
さかなクンには会ったことがないので実力はわからない。
でもテレビを見ないボクにとっては、著書がない。
論文もない可能性が高いし、あっても第一著者論文はないんじゃないかな。
動物学はある意味論文が総てなので、ボクにとってさかなクンは無でしかない。
それをこのメバル3種に分けたある意味、偉大な魚類学者たちになぞるのはあまりにもハレンチじゃないかな?
思わず、Dにバカと言ったことは後悔しているが、本音だぞ、と言いたい。
念のために、過去に、さかなクンの番組のホンカキに対して不愉快だなと思ったことはあるが、本人に対しては白紙である。
会ってみないとわからないけど、さかなクンというのは魚類学者ではないと思っている。
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ボクは水産生物の一般性を調べているので、これをやらないわけにはいかない。
今や水産物の「一般を感じられるもの」はスーパーにしかない。
売り場で唄を唄っている人がいた。
「マグロはマグロ〜♪」
もちろん聞き耳を立てているので聞けたというくらいの小声で。
ふたりの会話はあっちのマグロはこっちの半分の大きさでほぼ1000円、こっちは半額で大きさは2倍、「同じマグロなら、これでいいわ」ということらしい。
ボクのお目当てもビンナガで、国内で豊漁と聞いたから来た。
残念ながら宮城県産も和歌山県産もなかった。
3軒のスーパーをまわり、2軒にビンナガがあった。
こちらのスーパーの産地はバヌアツで、もう一軒は太平洋産だった。
せっかく鼻歌を盗み聞きしたので一冊買った。
なにしろあっちの本マグロ解凍の2分の1の値段は大きい。
ビンナガマグロは脂こそのっていないものの、酸味がほどよく、味がある。
ボクはマグロなどなんでもいい派かも知れない。
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中にムツが混ざっていた。
これが我がサイト、最北のムツである。
圧倒的に伊豆諸島以南の太平洋側に多く、日本海のものは少ないので非常に貴重である。
近藤さんには感謝しかない。
さて、今回の体長25cm・重さ299gの個体は、相模湾では深場に落ちていく途中のサイズである。
近藤さんが釣り上げた水深も120mなので、だいたい相模湾と同じではないかと思っている。
さて、男鹿沖のムツであるが、脂が乗っている。
この点でも相模湾のものと変わらない。
水洗いして三枚に下ろすと、包丁が微かに重い。
頭に近い方は皮を引き刺身にする。
ムツの脂は非常に上質でさらさらしており、下に接触するととろっと甘く感じる。
身は柔らかく舌にねっとりしている。
一昨年の兵庫県香住産同様、非常にいい。
上物といっていいだろう。
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魚がないからで、市場でも買い、東京都杉並区下高井戸、いつもの肉屋そばの魚屋でも念のためにバライカを買った。
小さなスルメイカほど重宝するものはない。
それなりに、たまった冷凍げそを解凍し、布巾に包んですりこぎでしばく、たたく、しばく、そして細かく切る。
郷土料理のために買った水耕栽培の三つ葉を適当に刻む。
ボウルにバライカのばらばらと、刻んだ三つ葉を合わせて小麦粉をまぶす。
徳島県美馬郡つるぎ町、杉本手延製麺の半田素麺は、だいたい4分から5分で茹で上がる。
ゆでている間にバライカ・三つ葉のボウルに衣を投入してしゃもじですくっては揚げる。
思い切って強めに揚げてかりっとさせる。
素麺が茹で上がったら冷水に取り、水を何度か取り替え、少し揉み洗いして、水切りをする。
つゆは長崎県平戸市の「あご煮干し」でとっただしに、塩・みりん・薄口醤油だ。
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