マガキガイ

Scientific Name / Strombus luhuanus Linnaeus, 1758

マガキガイの形態写真

SL 6cm前後。しっかりした貝殻で、巻き紙を縦にして下をすぼめたような形。眼と眼柄がとても発達して大きく、これを貝殻から外に伸ばすための外唇の切れ目(Stromboid notch)がある。外見がイモガイに似ているのは、危険な巻き貝への擬態とされている。
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SL 6cm前後。しっかりした貝殻で、巻き紙を縦にして下をすぼめたような形。眼と眼柄がとても発達して大きく、これを貝殻から外に伸ばすための外唇の切れ目(Stromboid notch)がある。外見がイモガイに似ているのは、危険な巻き貝への擬態とされている。眼と眼柄がとても発達して大きく、これを貝殻から外に伸ばすための外唇の切れ目(Stromboid notch)がある。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    軟体動物門腹足綱前鰓亜綱盤足目ソデボラ超科ソデボラ科(スイショウガイ科)マガキガイ属

    外国名

    学名

    Strombus luhuanus Linnaeus, 1758

    漢字・学名由来

    漢字 籬貝 Standard Japanese name / Magakigai
    由来・語源 『目八譜』(武蔵石寿著、服部雪斎ほか画 弘化2年[1845])による。貝表にある文様が、竹などで組んだ垣根に似ているから。
    ちゃんばらがい(ちゃんばら貝) 流通の場では高知県高知市周辺での呼び名、「ちゃんばらがい」として売られることが多い。「ちゃんばら」という言葉が生まれたのはだいたい大正時代のことである。そこから推測すると高知県でもともと使われていた呼び名ではない。観光的に作られた呼び名である。『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)にないことなどから1958年、ペギー葉山が「南国土佐を後にして」をヒットさせた後かも知れない。
    Linnaeus
    Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。
    目八譜
    1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。
    武蔵石寿
    武蔵石寿(むさし・せきじゅ 玩珂停、明和3-万延元年 1766-1861)。石寿は号、本名は武蔵孫左衛門。250石取りの旗本。赭鞭会。本草学、貝類。西洋の新しい分類学も取り入れようとしていた。『目八譜』(掲載1064種)、『甲介群分品彙』(掲載605種)、『介殻稀品撰』など。現在使われている標準和名の多くがここから来ている。

    地方名・市場名

    生息域

    房総半島以南、熱帯太平洋。
    潮間帯の岩礁底から水深50メートルの砂地。

    生態

    小石などのある潮溜(しおだまり)に柄の長い触角をだしている。
    ギザギザのついた蓋(ふた)を海底にひっかけて動く。
    産卵期は初夏。

    基本情報

    関東以南の本州、四国、九州、沖縄県の潮間帯、浅場に生息している。主な産地は伊豆半島、紀伊半島、徳島県から愛媛県南部、九州、沖縄などである。
    近年ではやや減少気味で、沖縄などでは養殖が試みられている。
    この貝を有名にしたのが高知県での「チャンバラガイ」という呼び名。味がよく名前がユニークなので人気が高い。
    そのためか関東周辺だけではなく全国的にこの高知県で新しく作られた、呼び名・チャンバラガイと呼ばれ始めている。
    不用意にチャンバラガイを使うと、地域地域の呼び名が消えてしまう可能性があるので、要注意である。
    巻き貝の中で人気が高く高級なものとなっている。
    珍しさ度 国内ではあまりとれなくなって特別な食材となっている。消費地のスーパーなどには並ばない。

    水産基本情報

    市場での評価 地域的な産物であり、入荷量も非常に少ない。
    漁法 採取
    主な産地 沖縄県、高知県、宮崎県、三重県他
    市場でのチャンバラ貝チャンバラガイ マガキガイは高知県の呼び名、「ちゃんばら貝」というのが東京築地でも使われる。もちろん高知県産ではなく、沖縄県をはじめ静岡県以南の国内、輸入ものもある。
    ティラジャーの剥き身 沖縄県ではしばしば剥き身で流通している。

    選び方

    原則的に生きているもの。

    味わい

    本州や四国の太平洋側では春〜夏。
    貝基本的に熱を通して食べる。熱を通してもあまり硬くなりすぎない。
    殻から取り出しやすく、身もそこそこに大きい。身には適度な甘みがあり、貝臭さはほとんど感じられない。
    ワタが非常にうまくて、身の方が脇役的だ。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    マガキガイの料理法/煮る(塩ゆで)
    トビンニャの塩ゆでマガキガイの塩ゆで 基本的には塩ゆでにする。海水、もしくは海水と同じ塩分濃度(3%)で5分ほど煮る。漬け込みはしなくてもよく、陸揚げして自然放冷する方がいいと思っている。酒。塩、酒・しょうゆの味つけで煮てもいいが、このあたりは好みの分かれるところ。巻き貝の中でもトップクラスの味。

    ティラジャーの食べ方マガキガイの食べ方 足の先にノコギリのようなギザギザのかぎ状の蓋があり、これを持って身をクルクルと出す。まるで巻き紙のようにきれいに出てくる。

    好んで食べる地域・名物料理

    静岡県から沖縄までの各地。

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/日高勝巳さん(宮崎県日南市)、長野淳さん(三重県熊野市)、宍喰漁業協同組合(徳島県海部郡海陽町宍喰町)、河村雄太さん(沖縄県石垣市)
    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『貝の和名』(相模貝類談話会)、『自然観察シリーズ 日本の貝』(奥谷喬司 小学館)、『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012)

    地方名・市場名

    ハセガイ
    場所三重県尾鷲市・熊野市新鹿町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ハツシャガリ
    場所三重県紀伊長島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ツメバイ ツメガイ
    場所和歌山県 
    ツノバイ
    場所和歌山県串本町たかはま 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    バイ
    場所和歌山県白浜町・瀬戸・串本地方 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    イジノバイ
    場所和歌山県白浜町東白浜 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    カマボッポ
    場所大分県佐伯市蒲江町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ハシリボッポ
    場所大分県南海郡蒲江町(現佐伯市) 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    イモガイ
    場所山口県長門市青海島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ユナブク ユノンウナ ユノンンナ
    場所沖縄県八重山 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    テラジャ
    場所沖縄県宮古・来間島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    テラジャー
    場所沖縄県石垣市 参考河村雄太さん 
    トンビ トンビガイ
    場所熊本県 
    トンピー トンピ[トンPとも]
    場所熊本県天草市 参考有江商店(熊本県天草市) 
    チョウセンババ
    場所熊本県天草郡苓北町富岡 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    キリアイ
    場所高知県宿毛市 備考蓋が細長く動く様が「斬り合い」のようであるからか。 
    トンビン
    場所鹿児島県下甑村手打(現川内市) 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    チダラ
    場所鹿児島県与論島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    テイラダ
    場所鹿児島県与論島・奄美大島瀬戸内町押角 
    トツビナ
    場所鹿児島県地方 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ケラジャ
    場所鹿児島県大島郡瀬戸内町押角 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    トビンニャ
    場所鹿児島県奄美大島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    トウラジャ
    場所鹿児島県奄美大島大和村今里 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ハシゲ
    場所鹿児島県志布志市 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ニンギョミナ
    場所鹿児島県桜島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    トュビテイラサ
    場所鹿児島県沖永良部島和泊町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    キツケビナ
    場所鹿児島県阿久根 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    キッチョビナ
    場所鹿児島県阿久根地方 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    トッビナ[飛っびな]
    場所鹿児島県鹿児島市 参考田中水産 
    カマボラ
    場所三重県尾鷲市 
    キリクチミナ
    場所長崎県 
    チャンバラガイ
    場所東京都伊豆大島、高知県、愛媛県南部 備考「ちゃんばら」という言葉は映画からくる言葉で、言葉としては新しい。生きのいいときに長い爪状のふたをよく動かす。この様子が「ちゃんばら」の刀を振り回しての立ち回りを思わせるため。あきらかに奇をてらって観光的に作り出した呼び名だ。 参考聞取 
    ツチノボリ
    場所宮崎県日南市 
    ティラジャー
    場所沖縄県石垣島・沖縄県南城市知念漁協 
    トッミナ
    場所鹿児島県南さつま市笠沙・鹿児島市喜入町 参考聞取、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    トネリ
    場所静岡県沼津市、伊豆半島 
    ピンピンガイ
    場所三重県尾鷲市・熊野市 
    ハセバイ
    場所三重県尾鷲市早田町、徳島県海部郡海陽町宍喰町・竹ヶ島 
    ハシリガイ
    場所大分県 
    ハシリンド  ハシリンドウ
    場所愛媛県宇和郡愛南町城辺 参考聞取 
    ハネイソメ
    場所三重県熊野市 
    ロウソクガイ
    場所三重県熊野市二木島町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
  • 主食材として「マガキガイ」を使用したレシピ一覧

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